正座

よく「正座をしていて足がしびれませんか?」と聞かれる。
私はしびれます。大いにしびれます。
自分の対局のときはそれほど気にならない。たまに席を立つし、盤面に集中しているせいかもしれない。しびれるのは、記録のときである。

育成会に入会したとき、ちょっとした面接試験があった。合否を決めるものではなく、幹事の先生との顔合わせのようなものである。そこで当時育成会の幹事の先生だった安西先生が、こうおっしゃってくれた。
「足がしびれて考えられないといけませんから、正座は崩していいですからね。」
今思い出しても、心温まる言葉である。私は面接試験というものが苦手で、それまでにも10回近く受けていたが一度しか合格したことがなく、この日もとても緊張していた。この一言があまりに嬉しかったので、よく覚えている。
それまでほとんど正座することがなかったので、しびれることさえ知らなかったのだが、おかげで対局中足が痛くなると、すぐに足を崩すようになった。

ところが記録を取るようになって、少し考え直したのである。
記録係を務めているのは、ほとんどが奨励会員だ。その自分よりも若い男の子たちが、実に長い間、正座のまま通しているのである。やはり正座というのは姿がいいもので、
「自分もまわりの奨励会の子があぐらになったら、足を崩すことにしよう。」
と決めた。

できることもあれば、できないこともあった。一度、目の前の子が、午後に入ってもまったく足を崩さないことがあった。私はずっと前に音を上げていて、彼から目が離せなくなった。けっこう体重も重そうな子だったのに、結局私の方の対局が終わるまで、ずっと正座のままだった。すごいとしか言いようがない。
そんなわけで、私もしびれても我慢できる時間が、だんだんと長くなっていった。
要するに...しびれます。しびれるけど、我慢してます。

女流初段 渡辺弥生