次の一手:甲斐-竹部戦(記:渡辺弥生女流初段)

飛び出す奇手・妙手は、下地となる知識と読みの力があればこそ。竹部さゆり女流三段の次の一手をお考えください。
竹部さんは私が女流棋士になったばかりのころからずっと良くしていただいている、面白おかしい、と見せかけて、実は優しくてまじめな大先輩です。おっと、これ実は秘密です。

ときには研究会もします。ほかの方にはお願いできない切れ負け将棋や目隠し将棋を指したこともあります。先日は一緒に棋譜を並べました。将棋のこととなると、何やら普段と雰囲気の違う竹部さん。こんなことをおっしゃいます。
「自分はセコイ手は指さない。正面から攻めるのが好き」
最初ご冗談かと思って笑ってしまった私は、「そんな人いるんだ!」とびっくりしました。そう言えば以前竹部さんと公式戦で当たったとき、四間飛車に振ったら右四間でそれこそ真正面から攻められてつぶされた苦い思い出があります。指し方そのものも、練習将棋でやった通り。確かにこれでセコイ、と言うことはできません。ちなみに私はセコイ手しか狙っていないので、このあと竹部さんと「別にいいじゃない」「よくない」と言う水掛け論を展開することになりました。

さて、下図は平成28年4月13日対局の女流王将戦予選、先手甲斐智美女流五段対後手竹部さゆり女流三段の終盤戦。△6九馬の王手に対し、先手の甲斐さんが▲5八香と合駒をしたところです。

次の一手(甲斐-渡辺)01

皆さまご存知、甲斐さんはタイトル7期の精鋭です。「なんだ、結果は見なくてもわかる」いえいえ、ちょっとお待ちください!
戦型は意表の横歩取り。王様丸裸、飛車角交換なぞなんのその、竹部さんの恐るべきけたぐりが飛び出して、盤上はあっという間に終盤戦に。しかし敵はあの甲斐さんです。鋭い反撃にあい、盤面の端へ端へと追いつめられる竹部玉。次の▲2三歩成があまりに厳しい...もはやこれまでか、と思われる局面で、竹部さんが起死回生の一手を繰り出します。

もちろん竹部さんですから普通の手ではありません。ヒント:角筋を生かして先手玉に迫ります。

女流初段 渡辺弥生